黒田さんの恋愛記録

東京在住アラサーOLが過去の恋愛の記憶をもとに恋愛物語を書きます。

最初の恋愛10

高校2年生、17歳のほぼ半分の時間抱き続けたその想いは、ついに外に放たれた。

途方もなく感じる沈黙の後で、先生がつぶやいた。

 

「・・・そうなんだ」

 

そう、なんだ…?なんとも意表をつかれた言葉が返ってきた。

本当のことを言うと、先生はもうとっくに私の気持ちに気が付いていると思っていた。だって、あんなにわかりやすく毎日会いに行って、楽しくてたまらないというオーラを出していて、先生がいなくなる時は思いっきり悲しそうになって。だから、今日私をドライブに誘ってくれたんだって思ってた。

「えっと、先生気づいてると思ってたんだけど・・・」

「いや、なんとなくそうなのかなあと思ってたんだけど・・・びっくりした」

先生は、本当に驚いているようで、私に言うべき言葉を探しているのがわかった。

「あのね、先生。わたし、ずっと言いたかったんだ。でも、なかなか言えなくて。今日先生と一日一緒にいて、やっぱり今日言わなきゃって思ったんだよね」

再び、沈黙。

自分で始めたことなのに、私自身もこの状況に混乱し始めていた。

とんでもないことを、してしまったのかもしれない。

「・・・ごめん、なんて言っていいか・・・言葉が見つからないんだ」

「そんな、深刻に考えないでいいよ。私、本当にこの気持ちを伝えたかっただけだから」

何も、見返りを求めていなかったかと言えば、それは多分嘘。だけど、大好きな先生をこんなにも困らせてしまったことがいたたまれず、早く電話を切ってしまいたかった。

「とりあえず、今日はもう大丈夫だから、電話切るね。聞いてくれて本当にありがとうございました」

「・・・こっちこそ、ありがとう」

「じゃあね。おやすみなさい」

静かに、携帯を置いた。

言えた。ついに、言えた。でも、想いを伝えたことですっきりするどころか、もやもやと何とも言えない重苦しい気持ちになってしまった。

先生の、あの反応はどういうことだったのだろう。

その意味を、ちゃんと言葉で聞きたかった。

次の日、先生から何も連絡はなかった。そして、その次の日も。

もう一生、先生から何も連絡が来ず、このまま先生とのつながりも消えてしまうのではないかという不安でいっぱいになった。

次の日、耐えきれなくなって、私から先生にメールを送った。先生はどう思ってるの?なんて聞く勇気はないので、私の告白を聞いてくれたお礼だけを短い文章で送った。

夜8時。先生の仕事がちょうど終わるくらい。

その日のうちに先生は返事をくれるかな。それとも、もう何も来ないのかな。

先生の車の中で聞いた、先生の好きなミスチルの曲を何度も繰り返し聞いていたその時、携帯が鳴った。