黒田さんの恋愛記録

東京在住アラサーOLが過去の恋愛の記憶をもとに恋愛物語を書きます。

最初の恋愛16

じっとりとした暑さがやって来た7月。私は体調を崩していた。めまいがひどく、まともに歩くこともできないことがあった。何とか学校には通っていたが、早退することもしばしばあった。病院に行っても、疲れと気候の変化だろうということで原因はわからずじまいだった。

いつもは、週末にしか会わないのに、その平日先生からメールが来た。

「今日の放課後、時間ある?」

「あるけど、先生どうしたの?」

「そっちに帰るから、会えないかな」

そうして、放課後の夜6時ごろ先生が私の学校の近くまで車で迎えに来た。

学校の近く、そして私は制服。

なんともリスクの高い行動だったが、その時の二人は、もう何かが麻痺していたんだと思う。

急いで、助手席に乗り込む。

「先生、平日なのにびっくりしたよ」

「あおいちゃんの体調が気になって…でも、元気そうでよかった」

先生は、確実に私のことを特別に想っている。

夜も更けて、星が見え始めた。都会のようにネオンもない暗い田舎では、星が信じられないくらいたくさん見える。空じゅうにぎっしりと星が輝いている。

少し車を止めて話をした。

「私、もっと数学が得意だったら、数学者か物理学者になって宇宙の謎を解明したいんだ。星空を見てると、地球にいるのに宇宙が見えて、すごく不思議な気分になるの」

「そうだね、不思議だね。でも、数学がすべてを解き明かせるわけではないよ」

そんな話をしながら二人で見つめた星空を私はずっと忘れないだろう。

 

先生との奇妙な関係が続いた18歳の夏。大学受験が控えているというのに、私の生活の中心は相変わらず、先生。ただ、先生ががっかりしないように、最低限の勉強はしていた。

先生とのドライブで行った、抜けるような青い海、青々とした草原と山々。その風景を彩るミスチル。すべてのシーンがキラキラとして、その先には幸せしかないように思えた。先生はこんな状況になってもなお、私への想いは口にしなかったけれど、私の気持ちは変わらなかった。

このキラキラとした幸せな時間に陰りが差し始めるのは、先生の誕生日を目前に控えた11月の終わりのことだった。