黒田さんの恋愛記録

東京在住アラサーOLが過去の恋愛の記憶をもとに恋愛物語を書きます。

最初の恋愛17

「私、先生の気持ちがわからない」

電話口で先生に告げた。

その日は、別の高校に通う親友の家に泊まっていた。その親友とは中学生のころからの付き合いで、私の家庭にいろいろと問題があったときも家族ぐるみでサポートしてくれて、心から信頼していた。私は、先生との関係について、その子には逐一細かく話をしていた。先生にも、その親友の存在は話してあった。

夜、布団に入りながらいつものように先生とのことを話していた時に、私が先生は多分私のことを好きだと思うけど、それをちゃんと伝えてもらったことがないというと

「じゃあ、今先生に電話して聞いてみなよ!」

という、高校生特有のノリでけしかけられた。どっぷりとこの恋物語に浸かっていた私も高揚した気分になり、勢いに任せて先生に電話したのだ。

「先生、先生は私のことどう思ってるの?」

微妙な沈黙が続いた後

「あおいちゃんのことは、特別な人だと思っているよ」

確信はしていたものの、実際に言葉にして告げられると、返事がすぐにできないくらい動揺してしまった。

「そっか…、よかった、ありがとう先生…」

なんとか、声を絞り出して返事をした。それから、先生の話が続いた。

「だから、俺とのことはなるべく周りの人に秘密にしてほしい。それと、あおいちゃんは今受験勉強が一番大事だから、それを邪魔するようなことはしたくない。ちゃんと受験して、合格して、そうしたらその先のことを一緒に考えよう」

「…うん、わかった。先生とのことはなるべく他の人には言わないようにする。勉強もがんばるよ」

そう言って、電話を置いた。

 

私は、自分の中で何かが崩れるのを感じた。

なんだろう…?

長い長い時間を超えて、やっと、好きな人から「特別だ」と言われて、うれしいはず、なのに…

なのに…

私は、自分の中の思いもしない反応に戸惑っていた。