黒田さんの恋愛記録

東京在住アラサーOLが過去の恋愛の記憶をもとに恋愛物語を書きます。

最初の恋愛8

「日曜日、朝10時、迎えに行きます」

その文字を見た瞬間、時が止まった。日本語は読めるのに、意味がわからないという経験をしたのは初めてだった。

今日は金曜日。日曜日は二日後。そして、この文字を送ってきた人がその朝10時に私を迎えに来る…。そういうことみたいだ。

でも、なぜ…?全く、わけがわからない。

それでも、私の心臓は感じたことのない速さで鼓動を打ち、身体がとても熱くなっていた。とにかく、返信をしなければと、携帯のボタンを押す。

「わかりました。日曜の朝10時に××で待ってます」

なぜ?と聞くことはできず、待ち合わせ場所だけ指定して、そのやり取りは終わった。

「いってきます」

日曜日、ほとんど誰にも聞こえないような声で、玄関のドアを開けて外に出た。4月の朝。やわらかい光を注ぐ太陽と淡い青色の空。私は、ふわふわとした心地で待ち合わせ場所へ向かった。9時50分。待ち合わせ場所は開店前のスーパーの駐車場。がらんとした広い駐車場には、まだ誰もいなかった。

ーこんな展開、あるんだなあ…

そんなことを思いながら待っていると、一台の車がやってきた。紺色のミニバン。静かに私の前に止まった。運転席の窓が降りる。

「黒田さん、おはよう」

「おはようございます…」

「とりあえず、乗りなよ」

運転席の窓越しに突っ立って、もごもごしている私に彼が笑いながら事も無げにそう言った。私は焦って車の反対側へ回る。後ろ?それとも、助手席…?少し躊躇いながら助手席のドアに手をかけた。これで、いいんだよね…?

緊張した手でシートベルトを締めるとすぐに、先生が明るい声で私に聞く。

「さあ、どこ行きたい?」

一瞬、頭が真っ白になった。今から私、先生とデートするの?

「えっと…、海の方かな…xx市とか…」

「了解、そこ行くの久しぶりだな」

紺色のミニバンは、ゆっくりと走り始めた。