黒田さんの恋愛記録

東京在住アラサーOLが過去の恋愛の記憶をもとに恋愛物語を書きます。

恋愛

最初の恋愛20 完結

けたたましく鳴る携帯を、恨めしく見つめていた。 新しい日々へ歩みだそうとしているのに、また黒い狂気が襲ってくる。 だけど、本当に歩みだしたいなら、これでちゃんと終わらせなければ… 私は意を決して、電話を取った。 「もしもし…」 「電話してごめん……

最初の恋愛19

スーツ姿の先生に会うのは久しぶりだ。 私は、静かに、でも必死に探していた。私の憧れの先生を。 ぎこちない会話。 以前なら、あふれ出すように言葉が出てきていたのに、言葉を発するパワーが全くわかない。 「あおいちゃんのお望み通り、スーツ着てきたよ…

最初の恋愛18

先生の、私への想いを知ったその日から、私の中で何かが決定的に変わった。 それが何なのか、薄々気が付いていたが、その考えを否定しようと必死になった。でも、一度沸き上がった思いは消すことができない。 先生が、先生ではなくなってしまった。 普通の、…

最初の恋愛17

「私、先生の気持ちがわからない」 電話口で先生に告げた。 その日は、別の高校に通う親友の家に泊まっていた。その親友とは中学生のころからの付き合いで、私の家庭にいろいろと問題があったときも家族ぐるみでサポートしてくれて、心から信頼していた。私…

最初の恋愛16

じっとりとした暑さがやって来た7月。私は体調を崩していた。めまいがひどく、まともに歩くこともできないことがあった。何とか学校には通っていたが、早退することもしばしばあった。病院に行っても、疲れと気候の変化だろうということで原因はわからずじま…

最初の恋愛15

「先生、数学教えて」 これが、私の切り札だった。先生と生徒という関係を維持しつつ、先生に会う方法。だけど、いくら何でも異性の教師と生徒が学校外で会うことはリスクが高いということはわかっていた。最初のデートとこの前の雨の日、その2回だってもし…

最初の恋愛14

先生とのおかしな再会を果たした私は、一人暗い部屋に戻った。振られた人と何事もなかったかのように会って、ごはん食べて。私、何やってるんだろう。 先生には毎日会いたいと思っていたけれど、いざ会ってみて、こんな状況で、なんだかばかばかしくむなしい…

最初の恋愛13

あのメールを送ってから、先生からはもう返事は来ず、わたしは日常へ戻っていった。いや、戻ろうと意識していた。 普通に学校に行って、友だちとしゃべって、勉強して・・・ 先生のいなくなった毎日。その現実と向き合い、前に進むのに必死だった。でも、あ…

最初の恋愛12

早起きした朝。 田舎の朝は静かだ。今日は窓から山のきれいな緑がくっきりと見える。 落ち着いた気持ちで、携帯のボタンを押した。 「先生、ごめんね。私が自分の気持ちを言ったことで、先生をこんなにも困惑させて悩ませて。本当にごめんね。今思えば、私い…

最初の恋愛11

あんなにも涙が出てくることがあるのか。 自分でも不思議に思うくらいに、泣き続けた。 「この前はびっくりしたし、困惑して何も伝えられずにごめんね。俺自身、いろいろと考え、悩んでいた。まだ、今も悩んでいるんだけど、黒田さんもこんな感覚なんだろう…

最初の恋愛10

高校2年生、17歳のほぼ半分の時間抱き続けたその想いは、ついに外に放たれた。 途方もなく感じる沈黙の後で、先生がつぶやいた。 「・・・そうなんだ」 そう、なんだ…?なんとも意表をつかれた言葉が返ってきた。 本当のことを言うと、先生はもうとっくに私…

最初の恋愛9

2回目の先生とのドライブ。初めての助手席。 車が走り始めても、私の緊張は続いていた。先生は少し笑みを浮かべたような表情でハンドルを操作している。 「黒田さん、この曲知ってる?ミスチルの昔の曲なんだけど」 そう言われて、車内に流れている曲に気が…

最初の恋愛8

「日曜日、朝10時、迎えに行きます」 その文字を見た瞬間、時が止まった。日本語は読めるのに、意味がわからないという経験をしたのは初めてだった。 今日は金曜日。日曜日は二日後。そして、この文字を送ってきた人がその朝10時に私を迎えに来る…。そういう…

最初の恋愛7

H先生へ想いを伝えることができなかった私は、抜け殻のように春休みを過ごした。当たり前に過ごしていた、先生との日々はあっけなく終わってしまったのだ。 先生がメールアドレスを書いてくれたプリントを眺めては、ため息をつく。 「辛くなったらいつでも連…

最初の恋愛6

春休み前の終業式の日。高校2年生最後の登校日。そして、H先生の特別授業が受けられる、最後の日。 その放課後、私はいつもの職員室前の自習机が満席だったので、空き教室で一人勉強をしていた。H先生は、他の生徒の指導中だったので、自分がいる場所だけ告…

最初の恋愛5

「私は、H先生のことが好きだ。」その頃の私は、そう確信し始めていた。「先生にもっと会いたい、もっと話したい。知らないことを教えてほしい。」私の毎日は、先生への想いでいっぱいになっていた。でも、それは「普通の恋愛」じゃないともわかっていた。先…

最初の恋愛4

H先生に会えない冬休みは退屈だ。早く学校が始まればいいのに、そう思いながら日々を過ごしていた。部活もしていなかった私は、毎日気乗りしない塾に通っていた。通信授業をテレビで見るだけで、特に面白くもない時間。「H先生が教えてくれればもっと楽しい…

最初の恋愛3

12月、冬休み前の終業式の日の放課後、いつものようにH先生に数学を教えてもらっていた。気づけば20時。辺りは暗く、職員室には私とH先生しかいなくなっていた。 「あー、もうこんなに暗くなってる!20時だ!先生遅くまですみません。もう帰らないと。」 外…

最初の恋愛2

初めて、H先生に数学を教えてもらって以来、私は毎日のように放課後職員室に通った。H先生とのマンツーマンの特別授業は長い時は2、3時間に及んだ。教科書の問題を一つ一つ丁寧にプリントの裏に図を描きながら教えてくれる。周りの生徒が言う「冷酷で怖い」…

最初の恋愛1

高校生のころ、私の最初の恋愛が始まった。 県内の進学校に進んだ私は、学年の成績はいつも1番か2番を取っているくらいガリ勉だった。高校2年生の秋、その日もいつものように、放課後職員室に向かう。一番苦手としていた数学について担当教員に質問するため…